縛り絵物語

縛り絵物語-2-
真也と京子

     

京子は、真也の性癖を悦ぶからだになっていた。真也は、京子を縄で縛っては昂奮するのだった。この物語は、京子と真也の交情の記録である。京子が薄々気づいていた自分の気持ちが、真也と付き合うようになり、からだを交わらせるようになって、真也が縛りを要求しだしてからというもの、京子のこころの中にうずくまっていた願望が露になってきた。はじめて出遭ってから2年、からだを交わらせるようになって1年、そうして今、京子は、真也と一緒に性の楽園を探しだしたのだともいえる。

「さあ、手を後ろに組みなさい、京子の好きな縄だよ・・・」
真也の今日の要求は、京子の手首を背中で縛り、乳房の上下を横に縄かけ、首から縦に割った縄を股間へまわし、背中へ絞り上げるというのだ。
「あああ〜わたし、どうしよう・・・ぁあああ〜なんだか、もう感じてきちゃったわよ・・・」
「オレだって、京子のこんな姿を見ると、もっともっと苛めて悦ばせたい気持ちになってしまう・・・」
京子は、真也から縄縛りを受けて、喜悦の浄土を彷徨うことで、明日を生きるエネルギーを蓄える。真也もまた、京子を欲望の対象とし、満たすことで、明日を生きるエネルギーを蓄える。男と女の摩訶不思議な関係が、ここにあやうく成り立っている。

      

京子は、真也の手で、着衣を一枚いちまいと脱がされていくとき、身体の奥の方でなにやら蠢いている感触を覚える。内臓のなにかしらが蠢くようなのだ。上着が脱がされ、スカートを脱がされ、下着だけの姿にされたとき、何時ものこととはいえ、やっぱり恥ずかしさに晒される。下着姿なのに真也は着衣のままだから、そんな気持ちになるのかも知れないと、京子は思った。

下穿きだけの裸にされて、京子は後ろ手に縛られていく。乳房の上と下から縄で絞られて、締められていくと、卒倒しそうなぐらいクラクラとしてくる。柱に立ち姿のまま括られ、真也の点検をうけるのだ。昨日も今日も、そんなに違わないはずのからだ。なのに真也は、じっくりと眺めまわし、肌を執拗に触り、体温を感じ、そうして異常がないかどうかを見極めるのだった。

「じゃ〜京子、そのズロースも脱いでもらうよ!」
真也の言葉に、 京子は恥じらいの気持ちを誘発される。女として、明るい部屋で、男の前で裸にされる。それも男は着衣のままだ。女心を羞恥の中にくすぐられる。真也は、ズロースのゴムの縫いこまれた腰を広げ、お尻からゆっくりと抜きはじめる。黒毛がみえだすあたりで、留められ、腰から臀部へ愛撫を受ける。
「京子、嬉しいんだろね〜こうして触られていくのが、嬉しいんだろ?!」
「はぁああ〜恥かしい、恥ずかしいわ・・・」
そういいながらズロースが足首から抜かれて、京子はひと糸纏わぬ裸にされる。そうして太腿の中ほどにも縄が巻かれて左右に拡げさせられてしまうのだった。真也が、黒毛の下へ顔を埋めてくる。京子は、それだけでからだの芯がズキズキと感じだすのだった。

      

京子は、柱に括られたまま、からだが隅々まで検査されたあと、畳の上に座らされた。京子の足首が交叉させられ、縄がかけられた。真也は、足首を縛った縄尻を首にまわし、太腿を拡げさせ、そうして足首へ戻して括りつけた。足と首を繋いだ縄がピーンと張る。京子は少し前屈みになった。
「ぁああ〜だめ、ダメです、こんな格好にしちゃ、だめです・・・・」
「ふふっ、うれしい?そんなに嬉しいのかい、京子!」
真也は、京子のだめダメと身悶えする素振りをみながら、後ろへ倒してしまう。

京子の足首が高く上を向いた。お尻が持ち上がり、股間が真上を向いてしまった。京子は、逃げも隠れも出来ない自分を、恥ずかしい気持ちで受け留める。
「ああ〜ん、だめよ〜わたし、ほんとに恥ずかしいんだから〜ぁああ〜だめ、こんなのイヤよ・・・・」
「もっと恥ずかしがってごらんよ、そのほうが、京子!美しいよ〜・・・・」
真也は、京子の拡げられた股間をうえから眺め、そうしてお尻を撫ぜてやりながら、ゆっくりと京子を恍惚の海へと泳ぎださせていくのだった。

     

真也が椅子を持ち出してきた。背凭れを床に着けるように、京子の膝の間に置いた。京子の足首と膝を背凭れに括りつけていく。京子は足を拡げた格好で、後ろ手に縛られ、乳房の上下に縄を巻かれてしまった。
「ぁああ〜こんな格好にして、どうするの、ぁああ〜ん、恥ずかしい・・・」
「なあに、京子が悦ぶための・・・っふふ、うれしいんだろ!」
「ぁあああ〜そんなこと〜いわないでよ〜・・・」
真也は、京子のからだを後ろへ倒してやる。手首を縛った縄尻を、椅子の足へと括りつけてやる。からだを拡げられた京子は、真也のお望みのまま、性感帯をなぶられていくのだった。

「ぁあああ〜こそばいぃ・・・ぁああ〜だめ、だめ、だめよ〜!」
真也の擽り責に、京子は陰部をじとじとと濡らしてしまう。筆でなぞられたあとには鳥肌が立つ。
「ここは、どんな具合だい、ええ、京子?!おお〜こんなに濡らしてしまって・・・」
「ぁああ〜ん、そこは、そこはだめ、だめ、まだ、そこはダメよ〜!」
京子が悶える喜悦の波は、ひいひいと声をあげだして、呻き悶える声に変わりだす。真也は京子の変化のさまを見て、ますます責たてていくのだった。

     

真也は、京子を得てからというもの、他の女には興味を示さなくなった。いわば京子に惚れこんだといえばいい。京子を一途に愛する・・・とは言っても永遠なんてことはありえない。
「京子のためなら、何でもしてやりたいね、愛してるんだよ!」
「ほんとかしら、男の人って、言葉と心が違う・・・そうじゃない?」
「だったら、女だってそうだろう、心で何を思っていることか・・・」
「だから、わたし、あなたの言うままに、こうして愛されて・・・」
真也と京子は、愛の証を与えあうようにして、身体を交わらせるのだった。

男と女の関係は、身体と心が一体になること、一心同体、なんていうけれど、異心異体なのだろう。真也と京子、お互いに愛し合っているとはいえ、身体を交わらせるだけでは物足らなくなった。京子を縛り、自由を奪っておいて性交することに、真也は快感を得るようになった。京子も真也に縛られ、自由を奪われて性交することで、いっそう深い快感を得るようになった。
「ぁああ〜こんなに縛られて・・・ぁああ〜わたし、もうだめ、いきそ〜!」
「京子の縛られたて悶える姿をみていると、もう昇天しちまいそうだよ!」
真也と京子のいる部屋は、こうして愛の巣となっていくのだった。

     

京子は後ろ手に縛られて真也の膝の上に跨がされた。裸の上半身を縄で締められると、もうそれだけで京子は妖艶な気持ちに満たされて感じ出してしまう。そのうえで、真也の膝に跨って、グジュグジュに濡れた秘所へ、真也の大きな竿が挿入されると、からだの芯が火照って言い知れに快感を覚えてしまう。
「ぁああ〜いい〜いい〜ぁああ〜いいいい・・・!」
「京子、グジュグジュに濡らしてるから、オレだって堪らないんだよ・・・!」
「もう、ぁああ、だめ、だめ、そんなに動かさないで、ぁああ〜だめ、だめ!」
京子は、そう云いながらも、股間を真也の股間に擦りつけていく。

真也の腰が静止し、京子の腰が前後左右に動かされる。真也の上に跨って、こうして自分から、合わせた股間の奥、好きなところへ当たるように竿を弄るのだ。
「ぅうう〜ふううう〜ひぃい、ふぁああ〜ひぃいい〜ひぃいい〜!」
「おお〜もっともっと、ズポズポ上下に動かしていけよ!」
「ふぁああ〜ひぃいい〜ハア、ハア、ヒイイいい〜!」
京子は、真也にからだを持ち上げられて、挿入、抜き差しを助けられるようにしながら、腰をくねくね、秘所へずぽずぽと挿しこんでは抜いていくのだった。

     

京子の求めるセックスは、元から縛られることに興味があったわけではなかった。真也から、最初は軽くだったけれど、手首に紐を巻きつけられて逝かせられた。そのうち次第にエスカレートしてきたのだった。泥沼にはまりこむような意識が、京子を弄っていた。からだの快感を求めること自体が、罪のような意識を抱かせた。京子の育った環境。良家のお嬢様、という世間体のなかで、セックスは子供を作るためにあると、思わされていたからだった。
「ぁああ〜もっと、もっと、きつく、ぁああ〜きつく縛って・・・」
「京子、そんなに感じていいのか!もうメロメロじゃないか、すごい感じ方だね!」
「あなたが、そう仕向けた、わるいいひと・・・ぁああ〜だめ、怖い・・・」

真也と身体を重ねあうようになって、セックスは子供を作らないための方策を練ってからというもの、京子は、快楽のなかにこそ生きる満足がある!と思い出した。そうして女の欲望を拡げていくことに、生きることの怖さを感じるのだった。
「しょせん男と女しかいないんだ!セックスは愉しむもんだよ、な、京子!」
「ぁあ〜わたし、嬉しい・・・けれど怖いのよ・・・ぁああ〜もっと苛めて・・・」
京子は、女のからだが求める快楽を、真也に求める。真也は、男の欲望を満たすために、京子を求める。異心異体の男と女が、どこまでも一心同体を求めて、セックスに励むのだ・・・。

     

真也には、京子を苛めたいという願望があり、京子には、真也に苛められたいという願望があった。京子が真也と出逢った最初のころ、手を握り合うのも気後れし、軽いキッスも恥ずかしいと思った。その分、内に秘めたエロスの炎がジクジクと、真也に逢うたび心が高鳴った。
「ねえ、いいだろ、キミのからだを見たいんだ」
「ええっ、わたしを見たいって?それ、どういうこと・・・・」
繁華街の喫茶店で、真也と向き合っていたとき、そう云われて、京子は狼狽した。いうまでもなく、真也にからだを求められていることを知っている。その夜、祇園のはずれにあったホテルへ同伴したのが最初だった。

真也は処女京子のからだを激しく求めてきたけれど、京子はそれほど燃えなかった。一度からだを許したとたん、逢うたびに真也から、ホテルへ行こうと誘われた。
「ぁああ〜ん、もっとやさしくして・・・そんなにきつくしないで・・・」
「京子のからだを抱くと、つい、苛めてみたくなるんだ・・・」
そういえば、季節がひとつ過ぎたころ、京子は初めて縛られた。お定まりのセックス体位に飽きてきたともいえる。京子のからだの炎が燃え出したのは、その時からだった。

      

京子のからだは疼いた。軽く縄をかけられただけなのに、それを想像するだけで、心が疼いてくるのだった。なぜなのかわからない。心が疼くことに理屈などありゃしないのだ。真也から苛めたいとゆわれた時は、ほんとに胸が熱くなって高鳴った。
「ほれ、手を後ろにまわして・・・」
「ぁあ、わたし、ぁああ〜わたし、なんだか、だめになりそう・・・」
「京子、もうそんなに濡らしてしまったのかい、指でもなかなか濡れないのに・・・」
「ぁああ〜だって・・・わたしだって、なんでか知らないわよ・・・」
真也が京子の手首を背中で括り、そのまま仰向けに寝かされた。手の自由を奪われたことで、京子は、真也の言いなりになるしかない。そう思うと、京子は、子供の頃に雑誌でかいまみた、縛られた姫様がうっとりとした目つきをしていたのを思い出す。
「ああ〜どうして、わたし、感じちゃうの、ねえ、真ちゃん、どうしてなのよォ・・・」
「そんなこと知るもんか、オレは、京子が濡れて悦ぶことだけを、考えてやるのさ・・・」
男と女の性といえば、それは理屈では割り切れない、言葉にはなりきれない、感情の動きなのだと、京子は思った。

     



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